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ゲノム編集トマトとは!?その特徴と安全性の管理について

食品・外食

国内で初承認されたゲノム編集トマトの特徴と安全確保の仕組みについての説明です。

ゲノム編集トマトとは

品種改良の新しい技術として注目が集まるのが「ゲノム編集」です。ゲノムとは各生物が持つ遺伝情報の全体のことで、その変化が品種のバリエーションを生み出します。例えば、アレルゲンとなるタンパク質の遺伝子を壊す、ジャガイモの毒素をつくる遺伝子を機能しないようにするなど、植物が望ましい性質になるように遺伝子を変えます。

これまでもさまざまな品種改良の方法が開発されてきましたが、どこが変化するかはランダムで、偶然の産物を待つしかありませんでした。一方、ゲノム編集は狙いを定めて遺伝子を変化させることができるため、品種改良の時間の大幅な短縮が見込まれています。

日本では、血圧上昇を抑える効果があるGABA(ガンマアミノ酪酸)を多く含むトマトが、ゲノム編集食品として2020年12月に初承認されました。このゲノム編集トマトは、普通のトマトの4〜5倍のGABAを含んでおり、1日に2個のミニトマトで血圧上昇抑制に十分な量のGABAを摂取できると言われています(右図:サナテックシード社提供)。

安全性確保の手続きについて

食品としての安全性も、環境に対する安全性も、基本的には別の生物由来の遺伝子が残っているかによって対応が決まります。現在、開発が進むゲノム編集は、もともとその生物が持つ遺伝子を変化させるので、自然に起こり得る変化を計画的に起こしているとみなされ、従来の品種改良(異なる品種をかけ合わせる方法など)と同様に安全性審査は不要とされています。他にも品種改良の方法として遺伝子組換え技術がありますが、これは他の生物由来の遺伝子を組み込む技術で、安全性審査が必要となっています。

制度としては、開発者はまず厚生労働省に「事前相談」を行い、そこで「届出」のみか、遺伝子組換え食品と同様の安全性審査が必要か判断されます(左図)。届出のみでも、変更箇所に関する情報提供が求められ、有害物質ができていないか等の確認が行われた上で、WEBで公開されます。表示は任意ですが、開発者が知らせたい場合は、独自に表示することが可能です。義務化が難しい理由としては従来の品種改良もゲノム編集も、外から遺伝子が導入されていないものは検証が困難なことが挙げられます。